君と笑えるなら…
8 新たな風
顔はにやけていた。
信じられないと言いつつ、顔は正直だった。
神田は少し顔を赤くし、僕はにやけた。
バシャッ
ボーっとしていたところに、湯がかけられた。
二人しかいない大浴場。
もちろんかけたのは神田だった。
「何するんですか!!」
あまりに突然で、それほど怒ってもいないのに、意外なほど大きな声で言っていた。
「お前がいつまでも、にやけているからだ。」
さっきとはうって変わって、冷静さを取り戻した顔をして神田が言った。
「にやけてませんよ。」
とは言うものの、やはり顔は正直者だった。
バシャッ
またかけられた。
「やめてくださいったら!!」
といいながら、仕返しをした。
大の男が大浴場で湯の掛け合いをしている。
恋人同士の微笑ましい絵。
これもまた新たな微笑ましい絵となっていた。