愛でた花、咲き誇れ

 

7 信じること

 

部屋に戻ると真っ暗な部屋に一人たたずんだ。

帰ってくると信じていた。

しかし、心のどこかで信じれないでいた。

 

――コンコンッ

 

そんな時、ドアを叩く音が響く。

ビクリと身体が動く。

心の叫びが聞こえるようだった。

ラビであって欲しい。帰ってきたよと笑顔で立っていて欲しい。

少し震える手でドアノブに手をかけた。

 

――ガチャッ

 

「神田。さっき話しかけたのに無視しないでくださいよ。」

アレンが少し怒った顔で立っていた。

 

神田の顔は明らかに落胆した顔をしていた。

それがあんまりに神田らしくなかった。

 

「神田…大丈夫ですか?大丈夫ですよ。帰ってきますから…必ず…」

アレンはそれだけ言うとドアを閉め、足早に神田の部屋を後にした。

 

いつもアレンに嫌味しか言わない神田。

しかし、このときだけは嬉しかった。

自分の気持ちが信じる方へ向かっていなかったから、誰か強く言ってもらえた時の心強さ…

 

「あぁ…わかってるよ…」

 

神田はドアに向かって静かに言った。

 

――アレから2週間が過ぎた。

 

一向に帰ってくる気配がなかった。

それでも、神田の心は日に日に強くなっていった。

昔から強かったものが増す。

 

食堂でのアレンとのやり取り。

そんなことが意外に楽しく感じていた。

 

しかし、自分の部屋に戻ると何もかも無に返される。

――ガチャッ

 

フッといつもと違う匂いがする…

伏せていた目線を上げ、部屋を見渡す。

 

見覚えがある。

膝を抱え、子供のように帰りを待っている…

音に気づき顔を上げる。

 

「おかえり…」

 

すっくと立ち上がり抱きつく。

呼応する…

 

「ただいま…」