愛でた花、咲き誇れ

 

5 気持ち

 

あれから2ヶ月くらい、あいつの顔を見ていない。

俺が思い出すのはあの泣き顔だけ…

どれだけ俺を惹きつけたのかも知らないまま、あいつは姿を消した。

 

任務……

 

自分が任務に行ってる間は、一切あいつの顔なんか思い出さなかった。

それなのに、今頭の中にいるのはラビだけだった。

 

「チッ…」

 

小さく吐いた舌打ちも虚しく心に響いた。

 

あいつの声が聞こえない。

 

あいつの顔が脳を掠める。

 

「…ラビ」

 

名前を呼んでみる。

もちろん返事はない。

舌打ちよりも虚しい響きが心を乾かす。

 

今までと何も変わらないはずなのに…

短時間にどれだけ俺に根をはったんだよ…

 

知らないうちに身体は動いていた。

ズカズカといつも以上に大幅な歩み。

有無を言わせぬ雰囲気。

誰も近づけるものはいなかった。

 

 

――バタン!!

 

 

大きい音がした方に目をやるとそこには、神田が立っていた。