愛でた花、咲き誇れ

 

2.無の時間

 

 

最近、任務から帰ってくると必ずあいつが俺の部屋にいる。

いつから俺の部屋にいるのかはあえて聞かない。

聞くのが怖い。

 

怖いなんて思ったことは初めてだった。

俺に怖いものなんか無かった筈だった……

 

 

おかえり」膝を抱えた格好でラビはぼそりと言った。

 

「……何してんだよ」少しイライラした声が出た。

 

 

――らしくない。

 

 

ラビを見た神田はとっさにそう思った。

頭とは裏腹に神田の声は怒りを帯びていた。

 

そんな神田の声を無視し、ラビは神田に歩み寄った。

 

「おかえり。」

もう一度耳元で呟き抱きついた。

 

ぬくもりを感じる。

 

 

――生きている。

 

 

ラビから安堵のような溜息が漏れた。

それは甘みを帯びていて、自然とラビの顔に引き付けられる。

 

神田の手がラビの頬に触れる。

なぜかすごく冷たかった。

暖めようと手で包み込む。

 

 

 

 

 

どれだけの時間そうしていたのだろう。

1分も経っていないかもしれない。

もしかしたら1時間経っていたかもしれない。

そんな無の空間に入ったようだった。

 

二人は離れ、食堂へと向かった。