君と笑えるなら…
19 名前
止められない…と言ったユウの声が優しくて、
優しすぎてまた涙が止まらなかった。
僕はこの人が好きなんだ。
最初の態度と違うこの優しさ。
僕にしか見せないこの優しい顔。
「…止めなくてもいい。」
自然とそんな声が出た。
僕以外にユウのこんな姿を誰かに見せたくなかった。
だから焦ったのかもしれない…
――?!
僕の言葉に驚いたユウは少し体を離した。
僕はそれ以上離れないようにしがみついた。
また一つユウは体を揺らした。
「お前…どうしたんだよ。」
ユウは変わった僕に少し戸惑っているようだった。
涙が僕の恐怖を流してくれたみたいだった。
だからこんな動きが出来たんだ。
「離れないでください。」
それだけ言い、僕はまた力を入れて抱きしめた。
ギュッとしたまま、ユウは何もしてこなかった。
「ユウ?」
――どくん
ユウの鼓動が高鳴った気がした。
僕が一つ名前を呼ぶだけで…
そういえば、ユウは僕のことを呼んでくれない。
アレン。
そう呼んで欲しい。
僕を見て欲しい。
「ユウ…呼んでください」
――どくん
「あ・・・あ・・・アレン」
そう呟き、ユウは僕の頭を撫でた。
心地よいぬくもりを僕は肌いっぱいに感じた。