君と笑えるなら…
10 心の声
しばらく声が出なかった。
いや…出せなかった。
神田が僕の胸の中で声を殺し、何かに耐えているのに気が付いたからだ。
「……どうしたんですか?」
聞いていいものか悩んだ。
どうせ答えてはくれないだろう。
そんな気はしていた。
「……なんでもない。」
なんでもないはずは無いが、神田がそうして欲しいのならそうしようと思った。
少しでも、落ち着くのなら…
そう思い、アレンは少し神田を抱きしめた。
無言のまま抱きしめあっていた。
その沈黙を破ったのは神田だった。
「お前…ラビと会ったのか?」
なぜここでその名前が出てきたのか分からないかった。
「えぇ。会いましたよ。」
「・・・近づくなよ。」
「えっ?」
僕の問いには答えず、神田は僕を置いて出て行った。