チョコレイトA

 

 

目を瞑り、息を整える。

そうすると、俺の身体ごとこの空間とは違うところに行った気になる。

この感覚が堪らない。

 

『ふぅ〜……んッ?!』

 

ふいに掴まれた。

ナニを…

目を開けるとそこには花魁…

 

またか……

 

『櫂薇…何してんだよ。」

 

こいつは俺と同じ歳の花魁。

たまに店から俺の部屋まで来る。

 

「だって暇なんだもの。遊びましょうよ。最近してないでしょ?」

 

こういう女は大っっ嫌いだ。

虫唾が走る。

 

『やめろ。』

 

静かに睨みを効かせ言った。

 

――ゾクッ

 

寒気が走り、櫂薇は手を離し、部屋からそそくさと出て行った。

 

『チッ…今日はツイてないことばっかりだ。』

 

舌打ちをして、自分の下半身を見上げた。

どれだけ、ご無沙汰でも握られただけじゃ起たない。

 

つまらない一生のような気がした。

何か変わるそんな予感はどこにも感じず、嫌気だけが増していた。

 

布団に寝転がり、天井を見上げた。

 

――バーーーン!!!!!

 

いきなりの大きい音に飛び起きる。

音は店から聞こえていた。

花魁の叫ぶ声、男達が怒鳴る声。

隼人は店のほうに出てみた。

 

「大人しくしろ!!!!!」

大声を出し、一人の男が紙を見せながら母さんに言った。

「これからは俺のものになった。お前らはこれから俺の下で働いてもらうぞ。」

 

母さんは泣き崩れ、俺は訳がわからず、紙を奪い見た。

 

「や…約束…手形?」

 

「そうだ。お前の親はな、この店を担保にでっかい賭けをしたんだよ。」

 

意味が分からなかった。

父さんがどこまでバカで、どれだけのでかい賭けをしたのかがさっぱり分からなかった。

 

その男は俺達に家を出て気とは言わず、今まで通り住まわせた。

その理由は分からなかった。

 

 

まだ……