13日の金曜日・J

 

 

神田の叫びはどこにも届かない…

 

「お前には見えるのか?」

ボソリと神田の耳元に低い男の声が響く。

 

くるりと周りを見渡す。

しかし、あるのはあの花たちばかり…

 

「お前は何を抱えてる?」

また男の声が耳元で響く。

 

その声にたどり着こうと、神田は周りを歩きまわる。

花たちを掻き分けながら歩く…

 

「お前はどうしたい?」

クスクスと笑い始めた男の声。

 

イライラするその笑いを消したくて、刀を抜く。

「抜刀!!」

 

しかし、刀は抜けない…

なぜかは分からない。

 

「今は抜けないさ…お前が俺を払うまで…」

クスクスと笑い続ける男の声。

 

どうしようもない状況。

いきなりのこの空間に混乱せざるをえない。

助けて欲しい…

そう思ったのは初めてで、どうすればいいのだろうと周りを見渡す。

 

「助けて欲しい?誰に?」

男の声は低さを増し、詰め寄るように耳元にまた聞こえた。

 

耳を押さえる。

しかし、手を超えて聞こえてくる声。

 

「お前は誰を探してる?探せるのか?」

男の声は神田を追い詰める。

闇が深くなる…

花たちは泣き叫ぶのをやめて、目を閉じて言う。

 

「お前に何が出来る?お前に何が見える?」

声は幾重にも重なり、低く響く…

神田の目から涙が零れ、光輝く…