13日の金曜日・I

 

 

「ちっ…どこまで行ったんだよ。」

神田は先ほどのことを忘れかけていた。

 

「アァ〜レェ〜ン〜。隠れてないで出て来いよぉ〜。」

ラビが間延びした声で叫ぶ。

 

それを聞いた神田はラビの声する方へと目を向けた。

 

「ラビ…そろそろ……?!」

 

声がしてすぐにラビの方を見たはずだった。

暗闇に慣れた目で見ていた。

決して間違ったわけではない。そういう確信があった。

 

それなのに、姿は見えない。

慣れていた目に一筋の光が映る。

 

「うわっ!!!!!!」

 

眩しくて目を瞑る。

『何かの冗談か?!』そう思い、神田は腕を振った。

 

――ガツンッッ

 

何か手ごたえがあった。

でもまだ光は続く、どんどん明るくなり、神田は光に包まれた。

 

少しずつ目を開き何かを探した。

 

………

 

………

 

「な…なんだ…」

神田は目を見開き、自らの前に出てきたものを見詰ていた。

光輝いていたものは少しずつ失い始めた。

 

この広い森の中、夜だから暗いのか…

誰もがそう思う暗闇だ。

もちろん、神田もそう思っていた。

 

自分の目の前にあるものが信じられず、神田は目を伏せる。

 

そこに広がるものは、花…

人の顔を持った花…

目は虚ろで、口はあけられている。

 

今まで歩いていた森とは思えない音が聞こえる。

人の呻き声、叫び声、泣き声、すべてが入り乱れる。

 

聞きたくなく、耳を塞いでも、手を通りこして聞こえてくる。

 

「やめろ…やめてくれ…やめろぉ〜!!!!」